昭和41年03月18日 参議院 本会議

[030]
日本社会党(社会民主党) 成瀬幡治
これに関連いたしまして、去る14日、第五十三海洋丸が韓国警備艇に不当に捕獲されるという不祥事件が発生しました。しかも抑留船員が起訴されるというような、うわさも出ておるのでありますが、一体これはどういうことなんですか。

日韓条約の審議の中で、政府は、李ラインは当然、条約批准後、韓国の国内法が廃棄されるのであると、そうして、こういうようなことは起こらないということを、しばしば繰り返して答弁をされておったと思うのであります。

どうなっているのか、事の真相と今後の対策並びに政府の所信をお答え願いたいと思います。



[033]
外務大臣 椎名悦三郎
次に、去る14日、第五十三海洋丸が韓国警備艇に拿捕されたという事実がございまして、その経過について申し上げ、政府のこれに対する対策の点につきましてお答え申し上げたいと思います。

3月14日午後1時40分、わがほうの漁船第五十三海洋丸は、済州島の西側の共同規制水域内、すなわち韓国漁業水域の外側約4マイル半の地点で、韓国の警備艇106号に臨検を受けたのであります。わがほうは巡視船「せんだい」が現場にかけつけて、106号と交渉いたしまして、事件の円満解決につとめたのであります。

しかるに、15日午前1時40分、突然106号艇が第五十三海洋丸に強行接触をいたしまして、武装した警備艇員2名が乗り込み、先に乗り移っておった同艇員2名とともに、威嚇射撃を行ない、また銃じりにてわがほうの乗り組み員を殴打するというふうな行動に出まして、実力行使によって第五十三海洋丸を済州港方面に連行をいたしました。

「せんだい」はこれを追尾いたしまして、同艇に対して抗議及び釈放要求を繰り返したのでありますが、第五十三海洋丸はそのまま連行されたのであります。

事件発生の報に接しまして、14日夜、外務省から在京韓国大使館に対し、また在韓日本大使館を通じまして、韓国の外務部に対し、本件の円満解決を申し入れたのであります。15日に至りまして、小川アジア局長は、在京韓国大使館の安公使を招致して、第五十三海洋丸が韓国漁業水域を侵犯した事実はないこと、よって拿捕連行は不法不当であること、抑留漁船及び乗り組み員を早急に釈放すること等、事件の円満な解決を要求する旨、申し入れたのであります。また、16日には、在韓日本大使館吉田公使より延亜州局長に対しまして、同様の趣旨を申し入れ、さらに、昨日、私は金韓国大使を招致いたしまして、事件の円満解決を強く申し入れた次第であります。このように、政府としては、ソウル及び東京におきまして、拿捕が不当である旨、また、早急に釈放すべき旨を強く申し入れております。

今回の事件は、日韓国交正常化後、最初の事件であり、事実関係を十分に調査をいたしまして、その上でわが国の正当な主張はあくまでこれを主張し、今後の円満な漁業協定の実施を確保するように配慮し、漁民の利益の保護につきましては今後とも遺漏なきを期するつもりであります。(拍手)