[002]
政府委員(運輸政務次官) 田邉國男
韓国警察艇による巡視船「ちくご」連行の事件につきまして御説明を申し上げたいと思います。
新聞、テレビ等ですでに御承知のことと思いますが、13日の午後李ライン海域において発生いたしました韓国警察艇による海上保安庁巡視船「ちくご」連行事件について、ただいまお手元に資料を間もなく配付いたすわけでございますが、要約いたしまして御報告をいたします。
13日午後0時55分ごろ、李ラインの漁船保護の業務で韓国警備艇の動静把握のために七発島灯台、これは韓国西岸の大浦西方にある七発島という小さな島に設けられた灯台でありますが、その西方5海里付近におきまして漂泊中の巡視船「ちくご」に、韓国木浦警察署所属の警察艇ハンサン号、20トン――通常漁船拿捕等を行なう海洋警察隊の警備艇と異ります。――が、機銃2門を向けながら高速で接近接舷、おりから警察艇に同乗中の全羅南道警察局警備課長が巡視船に乗り移ってきまして、「ちくご」は領海侵犯をしていると言いましたので、「ちくご」船長は、七発島から5海里の海上だから公海上であると主張しましたが、同課長は、一応話し合いのため、大黒山島へ入港するよう要請しました。
「ちくご」船長がこれを拒否しましたところが、大黒山島沖合いまで同行するよう要請を受けました。そこで、「ちくご」船長はこれを了承いたしまして、大黒山島沖まで同行、14時45分大黒山島北東1マイルの地点に到着しましたところ、15時30分NP605号が接舷をいたしまして、「ちくご」に乗船中の警備課長が下船、かわって武装警官2名が移乗してきたのであります。
その後話し合いを続行するために鎮里へ入港するよう重ねて要請がありました。16時45分やむなく鎮里へ入港いたしました。
双方の主張の対立点は、韓国側は、警備課長は李ライン内を領海だと言い、わが方の巡視船は、当然のことながら、領海は3海里だと主張した点にあったわけであります。韓国側は鎮里入港後、上部機関と善後措置を協議したようであります。
海上保安庁は事態を重視しまして、直ちに外務省に厳重措置を依頼いたしました。同省は2度にわたって代表部に抗議をしたわけでありますが、その後午後10時30分警備課長と鎮里警察署長が巡視船の船長のところにやってまいりまして、本件については地元警察にまかせられ、現地で解決せよとのことです、平和ラインは韓国領海であります、日韓会談で問題になっているところで、一日も早く解決されるよう希望します、今後はこのように近寄らないようにしてもらいたい、こういうことでありました。これに対しまして、船長は、巡視船は漁船保護が目的でありまして、今後もこの方面に行動することがあるが、領海3海里を侵犯したりその他不法なことはしない、こう述べて会談を終わりました。10時45分鎮里を出港、門司に帰港したわけでございます。
会談にあたっての韓国側の態度は終始非常に丁寧であったということです。
なお、韓国警察艇には、さきに申しました全羅南道警察局警備課長のほか、同局の局長、州地方検察庁検事長及び新聞記者4名が乗船、大黒山島付近の視察途上であったということであります。
以上、概要を御報告申し上げました。
[003]
委員長 川野芳滿
質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
[004]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
一昨日の佐世保の海上保安部巡視船の連行事件といいますか、その報告がありましたが、どうもふに落ちない点が2、3ございますので、時間もたくさん取っておりませんから要約してお尋ねをするわけですが、1つは、いまの報告では、1回は巡視船の船長は移動することを拒否したという話であります。まず問題のとらえ方として、公海と認めておるわけであります。しかもこちらは公船でありますから、そういう観点からするならば、1回拒否したが、2回目に同行というか、そういうふうに移動すること自体が私はおかしいと思う。そういう指示のしかたをしているのかどうか。これはどうなんです。
[005]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
私どもといたしましては、李ラインにおける漁船保護の基本的な考え方といたしまして、でき得る限り国際紛争を惹起しないというたてまえで、巡視船に対しては慎重に行動するように指示いたしております。
[006]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
李ラインと言うが、李ラインは日本政府は認めておるのですか。しかも、国際紛争と言うが、一方的に宣言したものに対して、公海上に宣言したものに対して、それを認めているから紛争云々ということばが出るのであります。紛争でも何でもないと私は思う。これはいかがですか。
[007]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
私どもとして李ラインというものを認めておるというふうな点につきましては考えておりませんが、しかしながら実際問題といたしまして、私どもの基本的な立場というものは、やはり現実にいろいろな国際紛争を惹起しないで有効に漁船保護をするという立場に立っておるわけであります。
[008]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
それならばその地点において、向こうの船が接舷したのでありましょうから、接舷するかどうかは別にして、その船同士のその地点においての話し合いを続行すべきであって、そういうふうに話し合いというものは持っていくのが当然じゃないですか。紛争を解決するなら、向こうの主張とこちらの主張があるならば、そこで解決して話し合いがわかったということでなくちゃならぬと思う。そういうことはどうなんです。
[009]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
先生のおっしゃるとおりだと思いますが、しかしながら私どもがわかっておる当時の状況からいたしまして、高速艇が武装しておって、洋上で、しかも巡視船の中において話し合いをいたしたわけでございますが、なかなか話し合いがつかないという状況で、おそらく船長としては自己の最良の判断というものによって一応同行を承諾したのではないかというふうに考えられます。
現在「ちくご」は門司に向けて――本日の朝入港したはずでございますが、私どもとしては船長から当時の状況を十分聞いた上でさらに今後十分検討していきたい、かように考える次第であります。
[010]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
巡視船に――しかも巡視船でありますから、そこに他の国の公務員が乗船してくること自体がおかしいじゃないですか。その点はどうなのです。それは巡視船の船長がどうぞお乗りくださいとでも言ったのですか。どうなのです。
[011]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
当時の状況は必ずしも私どもはっきりいたしておりませんが、おそらく強制的に接舷して乗船してまいったものだろうと思います。したがいまして、その乗船を拒否するというためには、おそらく実力を行使するということであったのではないかというふうに感じられます。
従来もそういうふうなケースが全然絶無ではないのでございまして、巡視船が追跡を受ける、あるいはまた向こうの警備艇により銃砲撃を加えられる、あるいは臨検を受けるというふうなケースも、従来昭和27年以降38年までの間に約20件ございます。その際にもわれわれとしてはでき得る限り現地で国際的にいろいろな紛争を起こさないというたてまえにおいて現実に処理をして、今日まで漁船保護の目的を達してきておるわけであります。
[012]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いまの御説明だと、日本の巡視船が昭和27年以来数多く臨検を受けたというのですが、臨検を受けることは国際慣例なり国際法上、これは合法的ですか。妥当なんですか。
[013]
外務大臣 大平正芳
ただいまの海洋法、それから成立した国際慣例から申しますと、非商業的な活動だけに従事する公船は、公海におきましては旗国以外の管轄権は全然及ばないということになっておりますし、まかり間違って領海の中におきましても、その指揮官の承諾がなければ、臨検その他の実力行使ができない、ただできることは、領海外に待避してもらいたいという要請をすることが沿岸国の官憲ができること、そうようにわれわれは解釈いたしております。
[014]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いまの外務大臣のお話、そのとおりだと私は思うのですが、そういう昭和27年以来何回もあったといういまのお話と、先ほどの政務次官の報告で類推すれば、あなたの御報告では非常に丁寧に扱われたといわれるが、ちっとも丁寧じゃないのですね。これはしかも27年以来たくさんあった。
ところが、いま新聞報道その他政府の動きもそうでありますが、日韓会談は中断いたしましたが、ごく最近これは再開ということで、韓国の新政権というか新内閣もできたというような話です。近く向こうの無任所の長官か何かが来て閣僚級の会談に入ろうというさ中ですね。
ちっとも丁寧じゃないです。しかも船長に脅迫――丁寧なんだから脅迫をしたのじゃないと思うのですね、そういうことばを使うならば。だからその巡視船の船長がどういう態度をとったか、まだよくわからぬというお話ですが、丁寧ならば、少なくともそういう公船に乗り込ませること自体もおかしいのですね。断わる、こう言ったらいいのです。そこで話がつくかつかないか、つかない限りは本国に訓令なり何を求めて、そこでやる、筋を通す、そういうしつけというか、訓令というか、そういう指示が与えられていないことも一つじゃないですか。それはどうなんです。
[015]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
その当時の状況の詳しい実際の雰囲気というものを私どもとしても船長から直接聞いた上で今後の措置を検討したいと思っておりますが、その当時の状況下において、どういうふうな雰囲気のもとにおいて、船長がそういう決意をしたかという点については、船長から当時の現実の模様を十分聞いた上で対策を立てていきたいと思います。
[016]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
政務次官にお尋ねしますが、いまの保安庁長官のお話ではまだ船長から詳細に聞いてないということです。その丁寧ということだけは聞いたのですか。いかがですか。
[017]
政府委員(運輸政務次官) 田邉國男
私の表現がもし不穏当であれば取り消しますけれども、ただ従来のこの李ラインにおけるいろいろの漁船拿捕の経過を見ますと、韓国側の警察、警視艇と申しますか、そういう立場の人たちの行動というものは非常に挑戦的であり、非常に挑発的である、そういうことから比較いたしますと今回の場合にはいともいんぎん、丁重にやったということでございまして、ただその比較論で申し上げておる、さようなことでございます。
[018]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
この巡視船は、最初に船長が、いわゆる大黒山島へ入港する要請に対し、これは断わったのですね。ところが再びそういう要請があったので、こう書いてあるが、この文面どおりだとするならば、これはどうかしていると思うのです。船長がね、これは丁寧ではなくて、これは武力によって脅迫されたかどうかという問題ですね。それでしかたなくでしょう、このとおり私が善意に解釈すれば。それで大黒山島沖合いまで行った。そうしたならばNP605号が接舷してきて、さらに今度は鎮里へ入港する、こういうふうに引き回されているんですね。ちっとも丁寧ではない。
そこでこれは外務大臣にお尋ねしますが、先ほどの御答弁のとおり、公海において、しかも公船が他国の官憲から臨検を受けたり、あるいは強制的に乗船されたり、強制的に連行されたりするということは、これは国際法上、国際慣例上、異例なことだろうと思いますが、そうでしょうね。
[019]
外務大臣 大平正芳
仰せのとおりでございます。
[020]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
そこで、この異例なことに対して外務省というか、日本国政府としてはいかなる措置をおとりになりましたか。
[021]
外務大臣 大平正芳
とりあえずの措置といたしましては、「ちくご」が早く釈放されることを求めなければなりませんので、一昨晩2回にわたって要請いたしました結果、ともかく10時40分釈放されたのでございますが、きのうの日韓会談におきまして、当方から、この段階でこういうことが行なわれたということの韓国政府側の意図は一体何かということを尋ねましたところ、先方の答えは、韓国本土に接近した海域に日本漁船の集団漁労が目に余るものがあります、したがって現地の官憲としてはこのような措置をとらざるを得なかったものと想像します、という答えでございました。
われわれといたしましては、久保さんが御指摘のように異例なことでございまするし、明らかに国際法、国際慣例にまっこうから違反しておる穏やかでない事件でございますので、いま海上保安庁長官から申し上げましたように、「ちくご」が帰りまして、船長以下から十分の正確なデータをちょうだいし、一面代表部を通じて韓国側の事情の調査を依頼してございますから、これらを取り寄せてから政府としてこの事件についての態度をきめて韓国側に申し出るつもりでございます。
[022]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いまのお話だと、韓国側の言い分は、韓国沿岸近辺に日本漁船がたくさん来ているので、そういうことからやったんだろう、こういうようなきのうの言い分だそうでありますが、これは漁船じゃなくて巡視船であります。巡視船は漁船ではないのでありますから、そういう言い分は通らぬと思うんですね。
それが1つと、もう1つは韓国側の事情も調べてもらって、当方の事情も調べると、こうおっしゃるけれども、事実行為としてはもう実際に起こっておるわけですね。いかなる事情であるかもしれぬが、公海上で公船が他国によって侵犯されたということでありますから、これはもう何ら詳細なことをお調べになる必要はないほど明々白々なる事実だと思うんですね。こういう事実行為がありながら、一ぺんも抗議の申し入れはされておらないようですね。いかがです。
[023]
外務大臣 大平正芳
抗議は一昨晩以来続けてやっておるわけでございますが、あなたが御指摘のようにこれは非常に異例な事件で、考えようによっては非常に重大な事件なんです。したがって私どもはこれを処理する場合に、単なる情報によってそれを基礎にしてやるということは軽率だと思うのでございまして、巡視船が帰りまして責任者から十分の事情を調査究明し、韓国側の事情も十分究明した上で適正な措置を講ずるというのが、私は正しい態度だといま考えております。
[024]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
詳細に、銃を向けられたか、あるいは発砲があったかなかったか、そういうようなことはこの報告には出ておりません。しかしこれは、政府としてこの国会にいま報告になった点でありますから、これは事実だと思うのですね。新聞や何かの問題ではなくて、政府自体がこの国会に向かって御報告なさったんですから。この事実に対してどう思うかというんです。
先ほど来のお話だと、公海でこういう公船がやられたのだということでありますから、これは国際法も国際慣例も無視されたものだということなら、その理由に基づいて適切な措置をてきぱきととるのが当然ではなかろうかと思うのです。その過程については詳細に取り調べをしなければわからぬ、そうでなければ手配ができないという問題もあるかもわかりませんね。損害があったとすればその損害はどうするかという問題がありますね。しかしそれはあとの問題です。
大綱としては、公海において公船が侵犯されたという事実に対して、それは即刻措置をとるのがほんとうじゃないでしょうか。国民感情からいってもおかしいじゃないかと思うのですが、どうです。
[025]
外務大臣 大平正芳
それは、御指摘を待つまでもなく、私どものほうは口頭で再三抗議をしてまいっておるわけでございます。私の申し上げるのは、正式の文書で、口上書をもって処理いたしますにつきましては、精細に事態を究明し、確かめた上でやりたいと考えておることであります。
[026]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
口上書をもって正式に措置をするというお話ですが、もちろん正式には口上書をもって申し述べるということでありましょう。これはこれでいいと思うのです。しかしその態度について申し上げたいんですが、かかる事件はいままでも20件あったそうであります。過去においてそれぞれ措置をとられたと思うのでありますが、いま非常に大事な時期だと思うのですね。いわゆる日韓会談にしても引き続きやるということでありますから、そういうさ中において、少なくとも国際法、国際慣例から見ても不当なことをやられて、はたして友好裏に会談が進められるかどうかの問題が一つあります。
でありますから、まず第一に、それじゃ口上書をもって抗議なり何なりをするのでありましょうが、いままでかかる事件に対しては、国際慣例上どういう方法がありますか。陳謝を求めるとか、いろいろありますね。そういう方法は、どういう方法をおとりになりますか、これが事実だとすれば。
[027]
外務大臣 大平正芳
いま申しましたように、事態を精細に究明の上、どのような口上書にいたしますか、そして先方に対してどういう態度を求めますか、これを慎重に考え中であります。
[028]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
時間がありませんから、外務大臣は外務委員会のほうで約束の時間で呼びに来ていますから、もう一つだけあなたにお伺いしたいと思います。
かような事件を起こしながらも、日韓会談というのは進められるんですか。国民感情としては、少なくともかかる事件の結末がつかない限りは、納得しない限りは、日韓交渉がコースとしていいか悪いかは別として、進めるべきでないというのが大半の国民の考えだと思うのですが、いかがでしょう。
[029]
外務大臣 大平正芳
日韓交渉が微妙な段階にあるときに起こりました事件として、非常に私は不幸だと思うのでございます。仰せのように、われわれが日韓会談を進めてまいる場合に、こういう事件が出来してまいるということは、全く戸惑わざるを得ないわけでございます。先ほど申しましたように、精細に事態を究明いたしまして、いま御指摘のようなもろもろの点も十分考慮に入れまして、日本政府といたしまして適正な措置をとってまいるつもりでございます。
そして、日韓交渉は、仰せのようにこういった問題でもやもやしておるということではいけませんので、事態をはっきりさせておかなければいけないものと思っております。
[030]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
続けて、この報告をお聞きになったと思うのでありますが、向こうの警察署長でありますか、わかりませんが、最後に言ったことばですね。船長に言ったことばは、日韓会談中でもあり、今後はなるべく彼らが言うところの領海内に立ち入らないように希望する、こういう話でありますね。日韓会談中であるから、微妙な段階であるからと、あなたもそうおっしゃっていますし、向こうもそう言っているんですね。
そうすると、これはやはり新聞報道などで一応推測しているように、彼らは、平和ラインというか、李ラインそのものの中に、将来にわたって自分たちの領海だということで主張しようという魂胆がありはしないか。あるいはそういうことによって韓国内のいわゆる国民感情というか、そういうものもひとつ考えていやしないか。こういうことが前提で日韓会談を進めるということについては、私はこれはたいへんなことだと思うのです。向こうの署長が出先の官憲として、日韓会談中でもあるから、今後はなるべく入ってきちゃ困る、こういうふうに希望しているんです。こういうことも十分考えていかなければならぬと思うのですがね。あなたはどうお考えですか。
[031]
外務大臣 大平正芳
平和ラインといい、李ラインというものは、われわれは認めていないわけでございます。われわれが関心を持ち、日韓間でやり遂げなければならぬ仕事だと思っておりますのは、あの海域における漁業の安全操業を確保するということでございまして、これが長きにわたって両国の漁業関係者が最大限の利得を安定して得られるような環境をどのようにつくるか、安心して操業ができる環境をどのようにして整備するかということを鋭意究明いたしておるわけでございまして、李ラインとか平和ラインとかいうことに全く関係なく考えておるわけでございます。そういうものはできないということでございますれば、漁業協定というのはわれわれが考えておるようなことができないわけなんでございます。あなたが言われるように土台がくずれるわけでございまして、私はまさかそんなことはあるまいと考えております。
[032]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いま外務大臣がおっしゃるように、これは大体土台が、くずれておりますよ。こういうものを向こうとしても、李ライン内に入らないようにというようなことをやっているのは、向こうの政情にしてもたいへんな問題があると私は思う。だからこの辺で日韓会談はおやめになって、静かに20件に及ぶところのこういう事件を片づけて、静かに向こうの政情を見て進めるべきだと私は思うのです。時間がありませんからそれだけにいたします。
[033]
日本社会党(社会民主党) 矢尾喜三郎
関連して1点だけ。――いま久保委員からるる質問がございましたが、1点だけお伺いしたいと思うのです。
きょう、「海上保安の現況」というものを海上保安庁から配付されましたが、その報告書の中に、昨年の6月に釜山の港外の公海上において「のしろ」という巡視船が、このときには機銃あるいは小銃で威嚇を受けて停船を命じられ、臨検まがいの尋問を受けた、そのときに日本政府は、これらの不法な拿捕、臨検に厳重に抗議するとともに、それが日韓会談の円満な進展をはかる上で重大な障害となることを重ねて警告した、こういう報告になっておりますが、この警告に対して韓国から日本政府に対して何か回答めいたものがあったか。
また、それから行なわれておりまする日韓会談等におきましても、そういう不法な行為に対してこちらの出した警告について論議されたようなことがあったがどうかということを1点伺っておきたい。昨年の6月です。巡視船「のしろ」です。このときには、公海上で機銃あるいは小銃で威嚇されて停船を命じられた。そうして尋問を受けている。
[034]
外務大臣 大平正芳
日韓交渉が妥結いたしておりませんし、日韓の国交は正常化いたしておりませんけれども、現に朝鮮海域におきましてはしょっちゅうそういう拿捕事件が起こること、これは両国にとって非常に不幸だと私は思うのでございまして、交渉中といえども、正常化前といえども、できるだけあの海域が平穏であることを希求いたしまして、両国がお互いに理解し合って紛争が起こらないようにこれつとめてまいりました。幸いにいたしまして、去年からことしにかけまして拿捕件数が非常に減ってまいりまして、比較的平穏に推移しておったやさきにこういう事件が起こりましたことを実は非常に心を痛めておる次第でございます。
いま矢尾さんの御質問の事件が起こりまして以来からずっと拿捕がありませんで、ことしの2月の6日でございましたか、1隻ありまして、これもすぐ即日返してもらったと記憶いたしておりますが、先方も非常に自制されておったということは、客観的事実が立証しておると思うのでございます。
今度の事件が、一体これは偶発的な単なるあやまちなのか、それとも意図的なものなのか、それからこれは現地の官憲のちょっと飛びはねた行動であったのか、そのあたりをよく究明してみないとわからぬと思うのでございますけれども、ここしばらく朝鮮海域は幸いに平穏に推移しておったのであります。この状況で、もう紛争を起こそうと思ってもからだが動かぬような状態にありたいものだと思って一生懸命にやってきたわけでございます。幸いにそういう雰囲気がだんだん出てきておったやさきでございます。いまのお答えといたしましては、そのように客観的事実はだんだんとあの海域は平和になってきておるということでおくみとりいただきたいと思います。
[035]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
もう1つ伺っておきたい。
いま外務大臣時間でまいりましたが、矢尾先生のいまの質問で、去年の巡視船の臨検事件というのは政府として韓国から何か回答を受け取って、たとえば陳謝の意を表したとか謝罪をさせたとかいうことはあるのですか。
[036]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
昨年の「のしろ」の事件につきましては現在手元に資料がございますが、韓国側がその当時どういう回答を外務省に出したかという点については現在手元に資料がございません。しかし従来私どもは現在のような韓国の態度と非常に異なった返事があったというふうには記憶いたしておりません。
[037]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
この問題はいずれまた席をあらためてお伺いすることにいたします。いままでの20件に及ぶところの拿捕事件の事後処理、これは外務省と協議の上資料を出していただきたいと思います。